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は じ め に
医療を取り巻く社会は,これまで経験したことのないスピードで変化している.少子高齢社会,働き方改革,人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)の急速な発達,そして「タイパ」や「コスパ」に象徴される価値観の多様化など,いずれも医療の現場に大きな影響を及ぼしている.こうした時代の潮流の中で,整形外科医がはたすべき使命はいっそう大きくなり,そして多様化してきている.
整形外科という診療科は,100年前にはカリエスやポリオなどの感染症を主たる対象とし,戦後復興期から高度経済成長期には労働災害や交通事故による外傷を対象として発展してきた.成熟社会を迎えた今日では,高齢者の脆弱性骨折,変形性関節症や腰部脊柱管狭窄症といった変性疾患のマネジメント,さらに癌患者の運動器疾患へのアプローチなど,その対象は大きく広がっている.整形外科は今や,国民の健康寿命延伸に直結する医療の中核を担い,運動器の機能を再建する診療科として社会に不可欠な存在である.
整形外科は他診療科から時に「大工」と揶揄されることもあるが,それはもはや的外れな表現である.整形外科は,科学的知見と精緻な技術をもって人々の「動く力」と「生活する力」を維持・向上させ,患者の生活をよりよい方向に導く診療科である.この誇りと責任を次の世代に引き継ぐことが,われわれに課された使命である.
しかしながら,こうした整形外科の根幹的な使命を支える「教育」について,われわれはどれほど真剣に向き合ってきたであろうか.教育は診療・研究と並ぶ大学教員の職務の三本柱の一つでありながら,整形外科の世界ではしばしば後景に退けてきた.整形外科医には,患者と直接かかわり,手術療法によって結果を出すことに情熱を注ぐ傾向がある.診療に多くの時間を費やすのは当然としても,教育に対する意識は決して十分ではなかった.本誌を手に取る読者諸氏にも,ぜひご自身の三本柱の比率を省みていただきたい.
「教育なくして未来なし」――この言葉はわれわれ整形外科医が真に自覚すべき現実であり,この言葉こそ,本稿の出発点である.

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