特集 アディクション支援のフロントライン
SMARPPとは本来何なのか?
今村 扶美
1
1国立精神・神経医療研究センター病院臨床心理部
pp.35-39
発行日 2025年6月5日
Published Date 2025/6/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt51070035
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Ⅰ はじめに
「SMARPP(スマープ)」とは,薬物依存症を主たるターゲットとした物質使用障害の治療プログラムである(松本他,2015)。国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦が中心となって開発を進め,2005年に国立精神・神経医療研究センター病院の医療観察法病棟で前身となるプログラムを立ち上げたのを機に,2006年に同院外来で試行を開始し,以降,実践と効果検証,改訂を重ね,現在では全国各地の医療機関や精神保健福祉センター,司法関連機関,民間回復施設等で幅広く活用されている。
SMARPPやSMARPPから派生したプログラムが広く実践されるようになったことで,試行当初と比して薬物依存症患者の支援をめぐる環境は改善されつつある。また,参加する人や実施する人のハードルを下げ,さまざまな場所でシームレスに支援につながりやすくなるツールの開発とその普及を目指す,という当初のねらいは着実に実を結んでいる。
一方で,SMARPPが――「SMARPP的なもの」も含めて――さまざまな場所で少しずつ形を変えて広がってくると,そもそもSMARPPとは何なのか,何をもってSMARPPとするのか,という課題も生じてきている。本稿では,SMARPP創生期より松本とともにその開発と普及に携わってきた者の一人として,SMARPPの歩みを振り返りつつ,SMARPPの在り方やその本質について私見を述べたい。

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