特集 人権/インフォームド・コンセント
患者の人権を守るとは何か―インフォームド・コンセントの本来の意味
秦 洋一
1
1朝日新聞
pp.623-627
発行日 1996年8月25日
Published Date 1996/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901425
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医療被害からの人権の保護が出発点
近代医学の職業倫理の根幹を築いた医聖とされているギリシャのヒポクラテスは「病者を助けよ.さもなくば,せめて害を与えるな」と戒めていた.医学が人間を助ける能力についての謙虚な認識がそこにはあった.
今から三千年以上前に制定されたとされるバビロニアの「ハンムラビ法典」には,医師が貴族の重い創を直したときには報酬が与えられるが,治療によって死亡させたり,眼球の膿瘍の切開に失敗して失明させたら「医師はその両手を切断されるべし」という規定があるという(シンガー・アンダーウッド『医学の歴史』1,酒井シヅ・深瀬泰旦訳,朝倉書店).奴隷や貧者を死なせたら,医師は代わりに自らが奴隷にならなければならなかった.
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