特集 臨床的時間論―生きた時間の回復と治癒
支援現場における交わらないリズム
村上 靖彦
1
1大阪大学
pp.534-539
発行日 2024年9月10日
Published Date 2024/9/10
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I 対人関係におけるリズムのずれ
ある人は過去を簡単にふっきり,ある人は過去の傷がいつまでも蘇ってくる。これは時間の堆積の仕方,過去へのアクセスの仕方のちがいであり,過去との関係の仕方が人によって異なるということだ。あるいは短いスパンでせっかちな人とゆったりした人との出会いという交わらないリズムもあろう。加えて二人の人の過去との関係の仕方のちがいもあるとしたら,二人のあいだの交わらないリズムは,人生の堆積全体のリズムのずれでも起きていることになる。
私たちの生活はほぼつねに対人関係のなかにある。臨床場面もそうだろう。人の出会いとは,ことなる時間の堆積をもつ者同士が出会い,ずれる経験だ。タイミングやリズムが合うことはめったにない。しかも私の脳裏に蘇ったり忘却されたりする過去そのものも,過去において誰かに関わった出来事であるとしたら,過去のその場面自体もまた対人関係上のタイミングやリズムのずれをはらんでいる。

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