誌上ディベート
膵神経内分泌腫瘍:肝転移切除の適応(どこまで切除するか?) ①「広汎な切除は控える」という立場から
青木 琢
1
,
窪田 敬一
2
1獨協医科大学第二外科 学内教授
2獨協医科大学病院 病院長・第二外科 教授
pp.12-16
発行日 2021年12月30日
Published Date 2021/12/30
DOI https://doi.org/10.34449/J0118.02.01_0012-0016
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現在のWHO2017分類1)では,膵原発神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm:NEN)は高分化型のNET(neuroendocrine tumor)と低分化型のNEC(neuroendocrine carcinoma)にまず分類され,NETはさらにその増殖能(Ki-67 index)に基づき,G1,G2,G3に分類される。このうち,NECは予後不良であることが知られており,また発見時にすでに遠隔転移,特に肝転移を伴っていることも多いことから,外科切除の適応は,遠隔転移を伴わない症例の一部に限定され,遠隔転移を伴う症例に対する外科切除の意義を示すエビデンスはない。一方,NETに関しては,比較して緩徐な経過を辿ること,肝転移を伴っていても患者の全身状態が保たれている症例も多いことから,切除可能と考えられる症例には,遠隔巣を含めた積極的切除が推奨されてきた。これは,外科切除後の長期成績が比較的良好であることを多くの後ろ向き研究が示してきたこと,また,切除不能例との比較において切除例の成績が良好であったことが背景にある2)。一方,近年のNEN薬物治療の進歩は著しく,切除不能例の予後が大幅に改善したこと,また肝転移に対する外科切除の問題点が次第に明らかとなってきたことから,NET肝転移に対する外科切除の意義は再検討の時期に入っていると考えられる。本稿では,「広汎な切除は控える」という立場から,NET肝転移に対する肝切除の問題点につき述べる。
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