誌上ディベート
膵神経内分泌腫瘍:肝転移切除の適応(どこまで切除するか?) ③ 各論を総括して
土井 隆一郎
1
1大津赤十字志賀病院 外科・院長補佐
pp.22-23
発行日 2021年12月30日
Published Date 2021/12/30
DOI https://doi.org/10.34449/J0118.02.01_0022-0023
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膵神経内分泌腫瘍の肝転移病巣をうまく制御できるかどうかが,QOLを維持しながら生命予後を延長するためにクリティカルであるという点は両論者ともが確認している。どのようにすればよりよく制御できるかということが,本ディベートの論点の中心であろう。両者とも日常診療では病態,基礎疾患,年齢などの患者背景を熟考して,肝転移病巣切除の適応を適切に決めていると推察するが,そこを敢えて「広汎な切除は控える」,あるいは「積極的に切除する」という立場をとった場合に,それがどのようなエビデンスによって裏打ちできるかということをわかりやすく,かつ挑戦的に論じていただいており,大変興味深いディベートになっている。まず,肝転移は膵神経内分泌腫瘍の最大の生命予後決定因子である。2010年以前は,膵神経内分泌腫瘍に対する有効な薬物治療がなかったため,肝転移に対しては切除が唯一の治療法であり,そうでなければ肝動脈塞栓術や神経内分泌腫瘍への有効性は明らかでないが近似疾患に有効性が報告された抗腫瘍薬を試みとして使用するしかなかった。
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