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パーキンソン病(Parkinson's disease;PD)に対する治療薬は1972年にレボドパ製剤が発売されて以降,現在までにドパミン系,非ドパミン系薬剤が開発され,実臨床で広く使用されている。その詳細については他稿を参照されたい。抗PD薬のなかで最も効果的な治療薬はレボドパ製剤であり,現在でも主軸となる薬剤である。しかし,経口レボドパ製剤の長期服用により,運動症状の日内変動(ウェアリングオフ)やジスキネジアなどの運動合併症が生じる。運動合併症を引き起こす危険因子は多岐にわたる。薬剤が経口摂取され中枢神経に移行するまでの過程では,薬剤の咽頭への残留1),胃内容排出の遅延2),小腸細菌の過剰増殖や腸内微生物叢の変化による薬剤吸収阻害3)が,血中の薬剤濃度の変動を引き起こし,運動合併症の発症に寄与する。また薬剤が中枢神経に移行した後の過程では,黒質線条体ドパミン神経の進行性変性に伴い,セロトニン神経がドパミン神経の代わりにレボドパをドパミンに変換し,ドパミン放出の調整機能をもたないためにドパミンの過剰産生や消失を繰り返し,運動合併症発症の要因となっている4)。運動合併症が出現した場合,まずはレボドパ製剤の頻回投与,そしてドパミン作動薬,COMT(catechol-O-methyltransferase)阻害薬,MAO-B(monoamine oxidase-B)阻害薬,イストラデフィリン,ゾニサミド,アマンタジンなどの他薬剤の併用で対処することが標準的治療法である5)。しかし病気の進行に伴い薬剤の内服量と種類が多くなるにつれ,副作用を生じたりアドヒランスが低下し,症状コントロールが不良になる場合もある。さらに経口薬剤のみでは対処できないような運動合併症をきたす場合に,デバイス補助療法は治療の一助となりうる。パーキンソン病に対するデバイス補助療法は,脳深部刺激(deep brain stimulation;DBS)療法,空腸投与用レボドパ・カルビドパ水和物配合剤(levodopa-carbidopa intestinal gel;LCIG)療法,そしてアポモルフィン持続皮下注療法が存在するが,本稿では,わが国で保険適用のあるデバイス補助療法であるDBS療法とLCIG療法について紹介する。「KEY WORDS」パーキンソン病,脳深部刺激術,空腸投与用レボドパ・カルビドパ水和物配合剤,進行期
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