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脊柱は本来,前額面では直線に配列しており,矢状面では頸椎は前弯,胸椎は後弯,腰椎は前弯を呈している。何らかの原因でこれらの配列が乱れることによって生理的な弯曲が失われた状態を「脊柱変形」と呼び,特に成人期以降に認められたすべての脊柱変形を「成人脊柱変形」と総称する1)。成人脊柱変形の原因は多岐に渡るが2),わが国では超高齢社会を背景にして,加齢による椎間板変性によって生じる腰椎変性(後)側弯症や,骨粗鬆性椎体骨折に続発する脊柱変形が日常臨床で遭遇することが多く,今後も増加することが予想される。脊柱変形により体幹バランス不良や神経圧迫による腰下肢痛が生じると,立位保持や歩行が困難となる3)4)。脊柱変形に伴い消化管通過障害が生じ,胃食道逆流症が出現することも近年注目されている5)。このように,成人脊柱変形は体幹・下肢の痛みといった局所症状のみならず,患者の生活の質(quality of life;QOL)にも影響する6)。成人脊柱変形によって引き起こされる各種症状に対し,対処療法として保存加療がまず行われるが,保存加療に抵抗し患者のQOLが著しく損なわれている場合には外科的治療が検討される。外科的治療の目的は生理的な脊柱配列(アライメント)を再獲得させることであり,矯正固定術が選択される。近年の脊柱変形に対する考え方の進歩と手術手技の発達によって,病態や変形の程度,変形の可撓性などを考慮しさまざまな手術手技が考案され,実施されている。その一方で高齢者が手術加療の対象となることが多く,周術期合併症への対策や費用対効果からみた手術の妥当性の評価など,解決すべき問題点は多い。本稿では,体幹バランス不良を呈した胸腰椎部における成人脊柱変形に対する矯正固定術について,その適応,各種手術手技,期待される効果と周術期合併症について概説する。「KEY WORDS」成人脊柱変形,手術,合併症
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