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特集 成人脊柱変形Up to Date
第4章 治療
成人脊柱変形に対する保存療法—脊柱変形,疼痛への効果
Conservative Treatment for Adult Scoliosis: Effect on Spinal Alignment and Pain
本郷 道生
1
,
宮腰 尚久
1
,
粕川 雄司
1
Michio HONGO
1
,
Naohisa MIYAKOSHI
1
,
Yuji KASUKAWA
1
1秋田大学大学院医学系研究科医学専攻機能展開医学系整形外科学講座
1Department of Orthopedic Surgery, Akita University Graduate School of Medicine
キーワード:
成人脊柱変形
,
adult spinal deformity
,
保存療法
,
conservative treatment
,
運動療法
,
exercise
Keyword:
成人脊柱変形
,
adult spinal deformity
,
保存療法
,
conservative treatment
,
運動療法
,
exercise
pp.736-742
発行日 2022年3月25日
Published Date 2022/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002201734
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はじめに
成人脊柱変形は,椎間板,靭帯の変性,筋力低下,骨粗鬆症患者における椎体骨折後の変形などを原因として,側弯,後弯をきたす.脊柱変形は加齢とともに進行し,腰背部痛,下肢痛,身体機能低下,肺機能や胃腸障害など腹部臓器障害を生じて生活の質(QOL)を悪化させるなどさまざまな健康障害を引き起こし2),生存率にも影響する5).
痛みや機能障害,姿勢異常などの症状を呈した成人脊柱変形の治療の第一段階は保存療法が一般的である.保存療法でも症状の改善しない場合には,手術療法が選択肢となる.手術療法は除圧術に加え,変形矯正を伴う多椎間の固定術が行われ,QOL改善に有効である一方で高い手術合併症率が問題とされている.したがって,変形矯正手術の実施にあたっては,患者が納得するまで十分な保存療法を行っても症状が改善しないときに適応するのが理想的であるが,いまだに適切な保存療法が確立されているとはいえない.
保存療法には,装具療法,運動療法,理学療法,ブロック療法,それらの組み合わせなどが報告されている.これら保存療法の有効性について,システマティックレビューではそのエビデンスは非常に脆弱とされている6,24,26).Glassmanら7)は2年間にわたって運動,ブロック,薬物療法を受けた患者と受けない患者を比較し,加療をしても症状は改善しない一方で,2年間の治療費は1万米ドル前後と相当な額であると報告し,一般的に行われている保存療法の存在意義に疑問を呈している.しかし近年では,少しずつ保存療法のエビデンスが増えつつある.本稿では運動療法,装具療法,そしてブロック療法について最近の知見を踏まえ述べる.
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