Special feature 知る・学ぶ・実践する 水回りの感染制御
■Case アウトブレイク事例を知る―発生から終息までの実際
❶グラム陰性桿菌
-―血液培養でピンク色の菌が発育した事例
岡本 耕
1
1東京大学医学部附属病院 感染症内科 特任講師
pp.257-261
発行日 2020年10月15日
Published Date 2020/10/15
DOI https://doi.org/10.34426/ict.0000000152
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はじめに(プロローグ)
週に一度,筆者が感染症外来を担当している病院の微生物検査室で,検査技師の方といつものように話していたある日のこと,ふと質問をもらった。「そういえば,血培からピンク色のグラム陰性桿菌が生えたんですけど,うまく同定できないんですよね…。」血液寒天培地を見せてもらうと,確かにピンク色のコロニーの菌が発育していた(図1)。菌株を譲り受け,本務先(東京大学医学部附属病院)で質量分析器(MALDI-TOF MS)を用いて同定を試みたところRoseomonas mucosaとの結果が出た。初めて聞く菌名だったので,早速成書やPubMedでこの菌について調べてみたところ,Roseomonas属菌は,ピンク色素を産生するブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌で,免疫不全患者に感染症を引き起こす日和見感染の原因菌として知られる細菌であることがわかった1,2)。翌週,質問をした検査技師の方に結果を話したところ,「そういえば,ちょっと前にも同じような菌が血培で生えていたんですけど,やっぱりうまく同定できてないんですよね…。」と新たな情報を教えてもらった。それがアウトブレイクを疑うきっかけとなった。
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