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はじめに
種々の薬剤耐性菌の中でも,基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(Extended-spectrum β-lactamase:ESBL)産生菌やカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae:CPE)は,耐性遺伝子が伝達性プラスミドにより媒介され菌種を超えて伝播することや,ヒトの腸管内に無症候性に保菌される特徴を持つため,伝播を完全に制御することは難しい。ESBL産生菌については,いまだに全国的な増加傾向に歯止めがかかっておらず1),もはや医療現場だけでなく環境,動物,食物などを介して健常者にも拡がっており,尿路感染症など市中感染症の原因となっている2)。一方,CPEは,ESBL産生菌に比べて検出頻度はかなり少ないと思われるが,保菌者が水面下で拡がっている可能性もあり,医療施設においては1例検出された場合でもアウトブレイクに準じて早急に対応するように求められている3)。昨今,感染対策への意識が高まり,特に急性期の医療施設では薬剤耐性菌検出患者に対して個室配置を含む接触予防策が積極的に実施されるようになった。その一方で,薬剤耐性菌検出患者への一律的な接触予防策の有効性や,経済的・人的負担,倫理的配慮や解除基準などについて様々な議論がされるようになり,より効果的で実践的な薬剤耐性菌対策が模索されている。
本稿では,まず,医療施設における薬剤耐性菌対策として一般的に参考にされている米国疾病管理予防センター(CDC)の『隔離予防策のガイドライン』4)やその一部として公開された『医療施設における多剤耐性菌の管理』5)における接触予防策について振り返り,整理する。次に,本題であるESBL産生菌とCPEを含む薬剤耐性菌に対する接触予防策の実施および解除基準について,その後に公表された各種指針やガイダンスを抜粋し,今後のESBL産生菌とCPEに対する接触予防策の課題について考察する。
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