環境とからだ・9
隔離環境
杉本 助男
1
1名古屋大学環境医学研究所
pp.81-84
発行日 1975年1月1日
Published Date 1975/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917170
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隔離環境の恐ろしさ
自分が気がつかないうちに精神のどこかに異常が生じてくる.その原因も分からない.これが隔離環境の恐ろしさである.具体例をあげてみよう.人があまりにも多すぎる都会から逃れて孤独になりたいと願う人がいる.現代社会ではこのような望みをもつ人が増えてきている.
アメリカの一海軍将校も,‘他人とのわずらわしい接触のない平和や静けさ,そして孤独がどんなにすばらしいものであるかを長時日実際に味わってみたかった’という強い動機をもって,南極にただ1人で6か月間生活した.しかし彼の初めの願いとは逆に,単調な変化のない,全く静かな環境が彼をおびやかすに至った.彼は自分自身との環境に処するために,大きな努力をしなければならなかった.3か月経過後には,かなりの抑うつ的気分に支配され,‘物音やにおいや人の声が狂おしいほどに欲しかった’と後に述懐した.
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