特集 一歩先を目指して再評価 これからのMRSA感染対策
MRSA院内サーベイランスの実践 積極的監視検査(アクティブサーベイランス)の有用性と地域サーベイランスの活用を含めて
森 美菜子
1
,
横崎 典哉
,
大毛 宏喜
1広島大学病院 感染制御部
キーワード:
病院救急医療サービス
,
院内感染
,
集団サーベイランス
,
ブドウ球菌感染症
,
感染予防管理
,
感染症伝播
,
細菌培養
,
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
Keyword:
Cross Infection
,
Emergency Service, Hospital
,
Population Surveillance
,
Staphylococcal Infections
,
Infection Control
,
Disease Transmission, Infectious
,
Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus
pp.306-311
発行日 2018年10月15日
Published Date 2018/10/15
DOI https://doi.org/10.34426/J04878.2019061882
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はじめに
我が国における院内感染対策は,各職種の認定制度,医療法および診療報酬の改定が追い風となり,院内感染体制の構築,マニュアルの整備,スタッフ教育などを行ってきた。その結果,医療機関における黄色ブドウ球菌に占めるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Me- thicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)分離頻度は,2008年の60.0%1)から,2016年には47.7%2)まで低下した(図1)。
しかし,現在もMRSAは検出頻度の高い耐性菌の一つである。厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)のデータでは,対象とする耐性菌による新規感染症発生患者の93.9%はMRSAであり,罹患率は3.1‰と報告されている3)。MRSAの院内感染が複数の医療機関から報告されており,院内でアウトブレイクを起こすことが問題である。
薬剤耐性菌が国際社会でも大きな課題となっていることから,2016年に厚生労働省が我が国として初めての『薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン』を決定した。この成果指標として,2020年までに黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率を20%以下に低下させることを掲げており,さらなる感染対策の強化が求められている。
そこで本稿では,広島大学病院(当院)で実施しているアクティブサーベイランスに基づいたMRSA対策について述べる。
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