特集 一歩先を目指して再評価 これからのMRSA感染対策
MRSAの保菌者調査と環境調査 ATP測定を含めた検出法の活用術
上地 幸平
1
1琉球大学医学部附属病院 検査・輸血部
キーワード:
Adenosine Triphosphate
,
環境モニタリング
,
院内感染
,
細菌学的技法
,
入院患者
,
ブドウ球菌感染症
,
保菌者状態
,
感染予防管理
,
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
Keyword:
Adenosine Triphosphate
,
Bacteriological Techniques
,
Carrier State
,
Environmental Monitoring
,
Cross Infection
,
Inpatients
,
Staphylococcal Infections
,
Infection Control
,
Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus
pp.283-288
発行日 2018年10月15日
Published Date 2018/10/15
DOI https://doi.org/10.34426/J04878.2019061878
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はじめに
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicil-lin-Resistant Staphylococcus aureus:MRSA)1)は,医療関連感染を引き起こす主要な薬剤耐性菌の一つであり,感染防止のためにMRSAの保菌または感染患者には接触予防策の適応が推奨されている。現在,MRSAは患者の臨床背景や細菌学的特徴から院内感染型MRSA(Hospital-Associated MRSA:HA-MRSA)と市中感染型MRSA(Community-Ac- quired MRSA:CA-MRSA),家畜関連型MRSA(Livestock-Associated MRSA:LA-MRSA) に鑑別される。我が国では1980年代後半から1990年代前半にかけて“MRSAパニック”と比喩されるようなHA-MRSAの大流行を経験しているものの,現在ではMRSAの分離は全体的に減少傾向である。しかし,JANIS(厚生労働省院内感染対策サーベイランス)の検査部門の2016年報2)によると,MRSAはサーベイランスに参加しているすべての医療機関から分離されており,MRSA分離率(MRSA 分離患者数/検体提出患者数×100)は施設により異なるものの,中央値6.6%と他の薬剤耐性菌と比して最も高い。さらに,今後はCA-MRSAの増加や新たなLA-MRSAの出現など,今後は医療施設内,ヒトのみならず,市中,動物間での感染拡大も危惧されるため,地域全体でOne Healthの観点からMRSAを含めたすべての薬剤耐性菌の問題を考えていく必要がある。
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