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内容のポイント Q&A
Q1 失語症者,コミュニケーション障害者の支援の現状は?
失語症は脳卒中や頭部外傷等で言語機能に障害が生じる状態で,改善には2~3年以上のリハビリテーションが必要とされる.2006年診療報酬改定で疾患別リハビリテーション料が導入され,脳血管疾患は標準算定日数180日,成果指標に基づく評価も導入された.失語症は算定日数上限の除外対象で,医学的に改善が期待されれば延長も可能である.令和4年の日本言語聴覚士協会の調査では,72%の施設で外来リハビリテーションが実施され,対象者の多くは失語症であった.
Q2 失語症者向け意思疎通支援とは?
失語症者向け意思疎通支援事業は,従来の聴覚障害中心の支援事業を拡張し,平成28年の改正で失語症や高次脳機能障害者も対象となった.一般市民向けの養成カリキュラムや言語聴覚士向け指導者研修が整備され,令和6年度までに46都道府県で養成事業が展開され,登録者は2,127名に達した.支援者は当事者の医療・行政・地域活動等の場に派遣され,市区町村や都道府県が実施主体となる仕組みで運用されている.
Q3 失語症者の社会参加を支える専門職の役割とは?
失語症者の生活や社会参加を支援するうえで,専門職は重要な役割を果たす.言語聴覚士等は,失語症者向け意思疎通支援事業の周知や活用を通じ,当事者や家族が必要な支援にアクセスできる環境を整える.また,失語症友の会や患者会等の当事者組織の存続・活性化支援も専門職の重要な役割である.直接的なコミュニケーション支援だけでなく,支援制度や地域活動の橋渡しとしてかかわることで,生活の質向上と社会参加促進が期待される.
Q4 今後,期待されることは?
地域に復帰した失語症者では,外出や他者交流の頻度が大幅に減少しており,社会参加の制限が課題となっている.近年は失語症者向け意思疎通支援事業や関連制度の整備が進み,地域での活動参加を支援する環境づくりが重要である.一方,40歳未満や特定疾病以外の頭部外傷による失語症者は介護保険の対象外となる制度の狭間があり,障害福祉サービスの活用が期待される.令和6年度改定により,言語聴覚士の配置や提供主体拡大で支援の幅も広がっている.

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