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内容のポイント Q&A
Q1 SMDにはどのようなものがあるのか?
痙性運動障害(SMD)は,痙縮,クローヌス,異常シナジー等の陽性徴候と,運動麻痺,感覚障害,筋力低下,巧緻性低下といった陰性徴候からなる多面的な病態である.臨床症状では,上肢の屈曲シナジーやWernicke-Mann肢位,下肢のstiff knee gaitが代表的であり,日常生活動作や生活の質を広く阻害する.
Q2 SMDはなぜ生じるのか?
SMDは,皮質脊髄路損傷により運動が障害され,代償的に網様体脊髄路や前庭脊髄路等の下行路が優位化することが症状誘発の基盤となっている.これに運動関連脳領域の過活動や,脊髄の相反性抑制等の抑制性回路の低下,廃用やmaladaptation(不適応)が重なり,拮抗筋同時収縮や異常シナジーとして顕在化する.また,努力的運動により,非損傷側皮質を含む目的外の脳領域の活動により症状が増悪する.さらに代償戦略の固定化と拘縮等の進行が悪循環を形成する.
Q3 SMDの評価はどのように行うべきか?
評価はmodified Ashworth scale(MAS)やmodified Tardieu scale(MTS)の受動的指標のみでは不十分である.歩行等の能動課題に基づく三次元動作解析,表面筋電図による筋シナジー解析,AIを用いたマーカーレス計測を組み合わせ,Goal Attainment Scaling(GAS)で生活成果を補足する.一方で,現行の個別指標のみではSMDの複雑な病態を十分に測定できない可能性があるため,新規評価法の開発が必要である.
Q4 SMDの発生予防と治療には何が必要か?
予防と治療は,①廃用症候群の予防,②反射経路(脳を含む)の調節,③感覚・運動の予測学習,④課題難易度の段階調整が必要である.ボツリヌス治療,ニューロモデュレーション,装具,ロボティクス等を適切に組み合わせ,患者の動きやすさの限界容量に合わせて個別化し,継続可能な練習設計で再学習を促す.多職種連携と患者教育を基盤に,活動量や症状をモニタリングし,機能回復と参加の目標達成を図ることが重要である.

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