おさえておきたい転倒・転落予防の基本知識と現場での応用
12. セッティング別の転倒・転落の予防と対策:④生活期(地域,在宅)-身体抑制含む-
井上 達朗
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1新潟医療福祉大学リハビリテーション学部理学療法学科
キーワード:
介護施設
,
老年症候群
,
多職種連携
,
内在的能力
Keyword:
介護施設
,
老年症候群
,
多職種連携
,
内在的能力
pp.1064-1069
発行日 2025年9月15日
Published Date 2025/9/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr034101064
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はじめに
超高齢社会を迎えたわが国において,生活期(施設・在宅)における高齢者の転倒予防は,リハビリテーション医療および介護における最重要課題の1つである.転倒は高齢者のADL低下や再入院の直接的な契機となるだけでなく,転倒恐怖感等の心理的影響を通じて,生活の質(QOL)にも深刻な影響を及ぼす.特に,施設や在宅で生活する要介護高齢者は転倒の発生率が高く,転倒により生じる大腿骨近位部骨折や頭部外傷等は生命予後にも負の影響を与える可能性がある.
高齢者の転倒・転落は,さまざまな原因により発生する老年症候群の1つとして位置付けられる(図1).転倒リスクは,大きく内的要因(個人要因)と外的要因(環境要因)に分類され,施設と在宅ではそれぞれに特有のリスク因子が存在する(表1).施設・在宅を問わず,高齢者の転倒は,筋力低下や歩行障害等の内的要因に加え,環境の不備や生活動線上の障壁といった外的要因が複合的に関与する.施設では設備の不適合や人員不足が,在宅では段差・照明不備・床上の整理整頓の不十分さ等が特有のリスク要因となる.

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