おさえておきたい転倒・転落予防の基本知識と現場での応用
15.転倒・転落予防と地域サポート
上田 哲也
1
1大阪公立大学医学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
キーワード:
転倒予防
,
地域
,
多職種連携
,
公営住宅
,
仮設住宅
Keyword:
転倒予防
,
地域
,
多職種連携
,
公営住宅
,
仮設住宅
pp.1490-1493
発行日 2025年12月15日
Published Date 2025/12/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr034141490
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
転倒予防の知見を地域へ還元
転倒は,高齢者にとって健康寿命や生活の質の維持・向上を阻害する要因であり,高齢者の約20~30%は1年間に1回以上転倒を経験すると報告されている 1, 2).自宅内の転倒発生率が高く,居間・寝室等日常生活で使用する頻度が高い場所で転倒することが多い.また,躓き・滑り等(以下,ヒヤリハット)は, 転倒の原因とされており 3, 4), 転倒に至る前段階として,ヒヤリハットを把握することは非常に重要である.
転倒を予防するためには,内的要因(筋力低下,バランス障害,視力障害等)に対するアプローチと,外的要因(住環境におけるリスク要因等)に対するアプローチが挙げられる.近年,外的要因に対するアプローチとして,家屋評価・住環境整備の有効性に関する報告が増えてきており,米英老年医学会の転倒予防ガイドライン等においても取り上げられてきている 5, 6).筆者らは,病院から地域コミュニティに退院する高齢者に対して,外的要因に対するアプローチとして,自宅見取り図を用いた転倒予防介入を行った 7-9).生活動線内の転倒危険因子(段差,滑りやすい敷き物,不適切な履き物,暗がり,未整理整頓箇所)の確認を行い,理学療法士が改善策を個別に指導した.結果として,退院後早期の転倒・ヒヤリハットの発生が予防できた.このように,住環境の身近な工夫にて転倒予防につながったため,後述の公営住宅の住環境整備事業においても,この知識・アプローチを活用した.リハビリテーション専門職として,医学的に有効とされている転倒予防の知識等を地域に還元していくことは非常に重要であると考える.

Copyright© 2025 Ishiyaku Pub,Inc. All rights reserved.

