おさえておきたい転倒・転落予防の基本知識と現場での応用
10.セッティング別の転倒・転落の予防と対策:② 術後(鎮痛薬等)
榎本 貴一
1
1練馬光が丘病院薬剤室
キーワード:
術後合併症
,
術後の鎮痛
,
せん妄対策
,
多職種連携
Keyword:
術後合併症
,
術後の鎮痛
,
せん妄対策
,
多職種連携
pp.845-849
発行日 2025年7月15日
Published Date 2025/7/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr034080845
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術後における転倒・転落の頻度と対策の必要性
術後30日以内の転倒・転落について調査した研究では,9,625人の術後患者のうち,1.6%が1回以上の転倒・転落を経験しており,そのうち何かしらの医療的介入が必要とされた例は2%で,骨折という重大なアクシデントにつながった例は1%以下と報告されている 1).この報告からは,術後の転倒・転落は問題としてそこまで大きい印象は受けないが,これはあくまで疾患や手術部位を問わない,かつ術後の短い期間を対象とした研究結果である.一方で,大腿骨骨折術後の患者を対象にした研究では,術後に転倒を起こす患者の割合は12~72%と報告されており非常に多い 2).また,待機的に人工膝関節置換術を受けた患者を対象にした研究において,術前に転倒を起こしている患者のうち45%の患者が術後1年以内に再度転倒を起こすと報告されている 3).したがって,術後の転倒・転落の問題を考える際には,どのような患者にリスクが高いのかを考え,人的資源を含めた医療リソースに配慮しながら,リスクの高い患者には長期的な目線で転倒・転落対策を進めていく必要がある.

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