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薬剤性の転倒
転倒の発生に関連する要因は,内的要因と外的要因に大別され,それぞれが複合的に関連して発生する場合も多い.内的要因の1つとして薬剤が挙げられる.近年の系統的レビューにおいても薬剤と転倒リスクとの関連性が示されている 1).
薬剤性の転倒は,高齢者において特に深刻な問題である.転倒は,骨折や頭部外傷等の重大な合併症を引き起こし,さらには死亡リスクを高めることがある.薬剤が転倒リスクを増大させる主なメカニズムは,以下のように多岐にわたる.
薬剤の中には中枢神経系に作用し,平衡感覚や筋力,反射速度の低下を引き起こすものがある.これにより,患者の姿勢維持能力が低下し,転倒リスクが高まる.また,降圧薬や利尿薬は,血圧の急激な低下をもたらし,起立性低血圧を引き起こすことで転倒を誘発する.加えて,向精神薬や抗コリン薬は,認知機能や判断力を低下させるため,転倒リスクを増大させる.
Fall-Risk-Increasing Drugs(FRIDs)は,転倒リスクを高める薬剤群として知られ,これには前述の薬剤カテゴリーが含まれる.これらの薬剤の処方を適切に評価し,転倒リスクが高い患者に対して慎重な薬剤選択を行うことが求められる.
FRIDsの処方管理をサポートし,処方中止のプロセスを容易にするために,Screening Tool of Older Persons Prescriptions in older adults with high fall risk(STOPPFall)2)が開発された.高齢者の潜在的な不適切処方(potentially inappropriate medications;PIMs)をスクリーニングするツールとして,Beers criteria, STOPP/START criteria, Fit fOR The Aged(FORTA)等があるが,STOPPFallはFRIDsに特化したツールである.STOPPFallは14の薬剤クラスを含み,主に向精神薬,抗コリン薬,心血管系薬剤が含まれる(表1).
転倒リスクの高い患者,転倒が発生した患者において,その要因を探索するために環境,患者の身体・認知機能の他に,使用薬剤に目を向けることも必要である.
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