おさえておきたい転倒・転落予防の基本知識と現場での応用
13.セッティング別の転倒・転落時の救急対応
全 剛史
1
,
安本 有佑
1
1板橋総合中央病院
キーワード:
適切な初期評価(primary/secondary survey)
,
セッティング別対応
,
多職種連携
Keyword:
適切な初期評価(primary/secondary survey)
,
セッティング別対応
,
多職種連携
pp.1168-1173
発行日 2025年10月15日
Published Date 2025/10/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr034111168
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はじめに
わが国は世界に類をみない速度で高齢化が進行し,救急現場では転倒・転落患者が常態化している.厚生労働省の統計によれば救急搬送件数は10年で約2倍に達し,その7割が75歳以上である.骨粗鬆症や薬剤相互作用,認知機能低下等,複数の要因が重なり,10 cmの段差や寝返りでも頭部外傷や大腿骨近位部骨折をきたす.これらのように転倒・転落はさまざまな背景の結果として起こる事象であるため,その上流にある要因について考察することが重要であるが,こちらは他項を参照いただき,本稿では転倒・転落に対する初期対応について言及する.
高齢者施設では夜間排泄動作中の転倒が多く,発見遅延が重症化を招く.転倒は外傷にとどまらず,「長期臥床→フレイル→サルコペニア・要介護状態」へと連鎖する社会的疾患である.本稿では医療機関だけでなく,在宅・高齢者施設等のセッティング別の転倒・転落の初期評価と実践的対応を,体系的に解説する.

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