おさえておきたい転倒・転落予防の基本知識と現場での応用
9.セッティング別の転倒・転落の予防と対策:①ICU(せん妄等)
藤原 大
1
1公益財団法人 宮城厚生協会 坂総合病院 リハビリテーション科
キーワード:
ICU
,
せん妄
,
PICS
,
ABCDEF バンドル
,
多職種連携
Keyword:
ICU
,
せん妄
,
PICS
,
ABCDEF バンドル
,
多職種連携
pp.628-633
発行日 2025年6月15日
Published Date 2025/6/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr034060628
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はじめに
集中治療室(intensive care unit;ICU)は,重篤な疾患や術後管理が必要な患者が集中的に治療を受ける場であり,生命維持装置や多くの医療機器が使用される.そのため,ICUに入室する患者は意識レベルの変動や身体機能低下を認めることが多く,一般病棟と比較して転倒・転落の頻度は低いものの,深刻な二次障害に至るリスクが高い.
ICUにおける転倒・転落の主な要因として,せん妄の発生,原疾患や長期臥床による筋力低下,多くの医療機器やチューブ類の存在が挙げられる.特にせん妄は,ICU患者の約30~80%に発生すると報告されており,混乱や焦燥感から患者自身が無理な離床を試みることで転倒・転落につながるケースが多い.また,ICUでの長期療養後にはPICS(post-intensive care syndrome)が問題となり,身体機能・認知機能の低下がICU退室後の転倒リスクを増大させる 1).ICUにおける転倒・転落は,頭部外傷や骨折等の合併症を引き起こし患者の回復を遅らせるだけでなく,医療費の増加や家族の負担増にもつながる.その予防は,患者の安全確保のみならず,医療資源の適正利用の観点からも重要な課題である.
本稿では,ICUにおける転倒・転落の現状と要因を分析し,転倒・転落予防のための戦略としてせん妄対策,PICS予防,ABCDEFバンドルの活用,早期リハビリテーションの推進,多職種連携の重要性について詳述する.

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