おさえておきたい転倒・転落予防の基本知識と現場での応用
8.転倒・転落の主な原因と対策:⑦ 認知機能低下,認知症
永田 智子
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1医療法人城東桐和会タムス浦安病院・千葉大学病院浦安リハビリテーション教育センター(前 社会医療法人社団蛍水会 名戸ヶ谷記念病院)
キーワード:
転倒・転落
,
不慮の事故
,
認知症
,
安全管理
Keyword:
転倒・転落
,
不慮の事故
,
認知症
,
安全管理
pp.536-542
発行日 2025年5月15日
Published Date 2025/5/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr034050536
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はじめに
超高齢社会を背景に,認知症および認知機能低下がある高齢者の人口は増加している.2010年代前半のわが国における認知症の有病率は約15%であった.高齢社会白書によれば, 2025年の推定認知症症例数は約700万人とされ,65歳以上の5人に1人が相当する.85~89歳では約40%,90歳以上では約60%の人が認知症と推定される(図1)1, 2).
軽度認知障害(mild cognitive impairment;MCI)の有病率は65歳以上で15〜25%, 罹患率は20〜50/1,000人/年程度と推定されている 3).
活動と参加を支援するリハビリテーション医療の現場では,数多くの高齢者を治療対象とする.活動拡大に伴い転倒・転落リスクは高まり,転倒・転落により生じる外傷は,時にADL低下や致死的外傷となることもある.リハビリテーション治療実施に際しては,個々の症例の併存疾患にかかわるリスク管理,安全対策の一環として,認知症がある症例を早期に把握して特有の症状とリスクを医療チーム全体で情報共有して対応することが求められている.
本稿では,認知症および認知機能低下についての基本的知識,転倒・転落が発生する臨床現場での対応の実際について概説する.

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