おさえておきたい転倒・転落予防の基本知識と現場での応用
3.転倒・転落の主な原因と対策:②疾患とADL低下
佐竹 昭介
1
1国立長寿医療研究センター 老年内科
キーワード:
脳卒中
,
パーキンソン病
,
認知症
,
多剤服用
,
頻尿・尿失禁
Keyword:
脳卒中
,
パーキンソン病
,
認知症
,
多剤服用
,
頻尿・尿失禁
pp.1435-1440
発行日 2024年12月15日
Published Date 2024/12/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr033141435
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はじめに
われわれヒトは,二足歩行で移動する能力を獲得し,体格に比べて大きな脳を有している.道具を作り,他者とのコミュニケーションを行うことで,環境を自らの手で変化させてきた.このように,他の動物とは大きく異なる能力を獲得して,社会を形成している.
加齢は,発達したヒト特有の能力を衰えさせ,自立する能力を奪っていく.特に二足歩行能力の低下は,その人の生活状況や生活範囲を大きく変える.歩行能力の低下は,脳卒中や関節疾患,視覚や聴覚に影響する感覚器疾患のみならず,疾患を治療するはずの薬物による有害事象によってもたらされることもある.
二足歩行をするがゆえに起こり得る,転倒というイベントはしばしば骨折を伴い,人生晩年期の生活や寿命に大きく影響する.転倒は,①心理社会的要素,②医学的要素,③服薬内容,④バランス,移動,歩行に関する要素,⑥感覚や神経筋にかかわる要素,⑦神経心理的要素,⑧環境的要素等の危険因子が複雑に関連し合って発生する(図1)1).
本稿では,このような危険因子のうち,疾患やその治療によって起こり得る転倒・骨折リスクについて考える.
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