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はじめに
筑波大学システム情報系で開発されたロボットスーツHybrid Assistive Limb(HAL)(両脚型)(図 1)は,コンピュータ制御下に,大腿皮膚に貼付した表面電極を介して検出する生体電位(bioelectric signals)と,角度センサで検出する股関節と膝関節の動き,および靴底の足圧センサで検出する荷重情報により,装着者の下肢が行う動作を検出しながら,その動作を膝・股関節外側に設置されたアクチュエータでリアルタイムに補助することができる外骨格装着型歩行支援ロボット(装着型サイボーグ)である2,5,24).HALは,3つの制御システム,すなわちサイバニック随意制御システム(cybernic voluntary control:CVC),サイバニック自律制御システム(cybernic autonomous control:CAC),サイバニックインピーダンス制御システム(cybernic impedance control:CIC)を備えている.CVCシステムは,主に下肢皮膚表面から検出される生体電位信号に基づいて膝・股関節外側に設置されたパワーユニット(アクチュエータ)がコンピュータ制御下に作動し,人の動作を補助する制御システムである.つまり,ヒトの生体電位信号に基づいて随意運動を制御する制御手法であるといえる.一方,CACシステムは,靴底の足圧センサから検出された荷重情報に基づき,あらかじめ組み込まれたヒトの歩行運動パターンを用いて膝・股関節外側のパワーユニット(アクチュエータ)が駆動し,装着者の動作を補助する制御システムである.CICシステムは,装着者がHALの重さを感じず,歩行中に両下肢の固有感覚をリアルタイムに感じるための制御システムである.これらのHALの動作支援技術を用いた運動下では,脳・脊髄→運動神経→筋骨格系→HAL,そして,HAL→筋骨格系→運動神経→脊髄・脳という脳・神経系,身体,HALとの間で,インタラクティブなバイオフィードバックループが構成されている可能性が考えられる.そのためHALを用いた動作訓練では,HALの動作支援によるより望ましいと思われる動作を装着者にフィードバックすることによって,装着者の動作能力を高めることが期待されている21).
筑波大学附属病院では,HALを用いた機能回復治療の安全性・有効性を検証するため,脊髄損傷・障害に伴う対麻痺や四肢麻痺患者の歩行訓練をHALを用いて施行してきた4,12,18〜20,22).上肢機能障害患者の肘関節・肩関節の機能訓練にもHALを導入してきた6,10,11,16).脊柱靭帯骨化症の領域においても,胸椎後縦靭帯骨化(ossification of the posterior longitudinal ligament:OPLL)に伴う重度脊髄障害患者の術後急性期の機能回復訓練に,HALを導入して治療を行ってきた.また,脊髄症術後の慢性期に歩行障害の再増悪をきたした患者に対してもHALを用いた機能回復治療を施行してきた1,7〜9,13〜15,23,25).本稿では,脊柱靭帯骨化症に対するHALを用いたロボットリハビリテーションについて概説したい.
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