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第1土曜特集 エピゲノム編集の進歩と医療応用への道
X染色体関連疾患とエピゲノム編集
-――不活性化アレル再活性化の現状と課題
Epigenome editing in X-linked disorders
――Current status and perspectives of inactivated allele reactivation
目黒 牧子
1
,
堀家 慎一
1
Makiko MEGURO-HORIKE
1
,
Shin-ichi HORIKE
1
1金沢大学疾患モデル総合研究センター
キーワード:
X染色体不活性化
,
X連鎖性疾患
,
神経発達障害
,
DNAメチル化
Keyword:
X染色体不活性化
,
X連鎖性疾患
,
神経発達障害
,
DNAメチル化
pp.445-452
発行日 2025年11月1日
Published Date 2025/11/1
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295050445
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女性は2本のX染色体を持つが,そのうち1本は細胞ごとに不活性化される.このためX連鎖性疾患では,正常アレルが発現する細胞と変異アレルが発現する細胞が混在し,その割合の違いが症状の重症度を左右する.血友病のような単純な欠損型疾患には遺伝子補充療法が有効とされる一方,MeCP2やCDKL5のように発現量が過剰でも不足しても病態を引き起こす遺伝子では,遺伝子補充療法による過剰発現が問題となる.この課題に対する有望な戦略が,不活性化された正常アレルの再活性化である.エピゲノム編集によりDNAメチル化やヒストン修飾を操作することで,レット症候群やCDKL5欠失症候群では神経細胞モデルにおける改善効果が,乳がんでは腫瘍抑制因子FOXP3の再活性化が,さらに脆弱X症候群(FXS)ではFMR1遺伝子の部分的な回復が報告されている.これらの成果は,従来治療が困難であったX連鎖性疾患に対して,新たな治療の可能性を拓くものである.

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