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第1土曜特集 生体システムのレジリエンス――神経–免疫–内分泌連関から探る適応と修復のメカニズム
アルツハイマー病と脂質代謝の連関
Alzheimer’s disease and lipid metabolism
川出 野絵
1
,
山中 宏二
1
Noe KAWADE
1
,
Koji YAMANAKA
1
1名古屋大学環境医学研究所病態神経科学分野
キーワード:
アルツハイマー病(AD)
,
脂質代謝
,
肥満
Keyword:
アルツハイマー病(AD)
,
脂質代謝
,
肥満
pp.85-89
発行日 2025年10月4日
Published Date 2025/10/4
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295010085
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脳にはリン脂質や糖脂質,コレステロールが多く含まれ,これらは軸索やミエリン鞘の維持や機能に寄与している.また,多価不飽和脂肪酸は脳機能にとって保護的に働くとされている.アルツハイマー病(AD)患者の脳では,これらの脂質分子種のレベルが変動していることが報告されており,ADの脳では脂質代謝系が変動していることが示唆される.また,ドコサヘキサエン酸(DHA)などの脂肪酸やコレステロールについては,脳と末梢の間の流入・排出機構が報告されている.さらに,代謝性疾患はADの環境要因であることから,末梢代謝組織での脂質代謝系の変化は脳のAD病態に影響することが推察される.一方,肥満であると認知症やADの発症リスクが上昇するとされているが,ヒトと齧歯類のいずれにおいても,肥満で認知機能は低下しないとする報告もある.肥満と認知機能障害の関連には複数の要因が関与している可能性があり,多面的な解析や考察が求められる.

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