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第1土曜特集 頭痛診療の新潮流――神経科学の進歩がもたらす治療戦略
頭痛医療のトピックス
片頭痛と痛覚変調性疼痛
Does the nociplastic pain mechanism underlie migraine?
加藤 総夫
1
Fusao KATO
1
1東京慈恵会医科大学痛み脳科学センター
キーワード:
痛みの3つの機序
,
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)
,
腕傍核
,
扁桃体中心核
,
広汎性痛覚過敏
Keyword:
痛みの3つの機序
,
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)
,
腕傍核
,
扁桃体中心核
,
広汎性痛覚過敏
pp.435-440
発行日 2025年8月2日
Published Date 2025/8/2
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294050435
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痛みはどのようにして生じるのか.国際疼痛学会は,組織損傷や神経障害によって生じる侵害受容性疼痛(nociceptive pain)や神経障害性疼痛(neuropathic pain)に加え,これらだけでは説明できない痛みの機序として,痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)という第3の痛みの機序を提唱した.“組織損傷や神経障害に起因せず痛覚神経系の機能や活動の変化によって生じる痛み” と説明される痛覚変調性疼痛は,複数の感覚モダリティの過敏,広汎性の痛み,多様な随伴症状などの特徴を持ち,片頭痛に伴うさまざまな症候に合致する.片頭痛はなぜ “痛み” なのか.なぜ視覚や聴覚,嗅覚など,さまざまな感覚の過敏を伴うのか.予兆や前兆はどのような神経機構で生じるのか.痛覚変調性疼痛の発生に脳内のカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の関与が示唆されているが,片頭痛においてその役割は何か.そして,組織損傷や神経障害などの “原因” がなく体験される “痛み” とは,いったい何なのか.片頭痛を痛覚変調性の機序を伴う痛みと捉えることによって,その病態の理解が深まることが期待される.

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