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講座
痛みの生理学 6.視床における痛覚信号の伝達と変調
Physiology of Pain. 6. Pain Signal Transmission and Modulation in the Thalamus
相川 貞男
1
Sadao AIKAWA
1
1北里大学衛生学部生理学教室
1Dept. of physiology, School of Hygenic Sciences, Kitasato Univ.; Seishin-Igaku Institute.
pp.379-388
発行日 1983年6月15日
Published Date 1983/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102869
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Ⅰ.はじめに
痛みは生命維持のための防御反射や逃避反応の引金となる重要な入力信号であり,臨床的にはほとんどの疾病につきまとい患者を悩ます臨床でありながら,いまだに解明されないのは痛み自身1,2,3)の持つ多面性と実験上の困難さのためである.Iggo4)もいうごとく痛みはヒトの意識体験であり,われわれは動物実験から可能性としての痛覚機構を推測し演繹するにすぎない.したがって痛感実験において動物が本当に痛みを感じているかどうかは疑問であり,痛みは人類のみに存在する固有の感覚であると極言するものさえある.
すべての感覚は本来主観的事象であり客観的評価をなしえたいが,客観化が最も難しいのが痛みであり,定量的刺激を与えにくく,応答の数量的計測が困難なためである3).さらに人種5)・性別6)・年齢5,7)・学歴・社会的地位7)を含めての個体差があり,過去の個人的体験や験者と被験者間の対人力学interpersonal dynamics7)によって左右される不安・恐怖などの心理的側面からの影響も大きい.近年,痛覚体験という用語がもちいられるようになったが,こうした多変量的因子を総括的に把握しようとして生れた概念である3).
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