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第5土曜特集 マルチオミクスが解き明かす疾患の本質――統合的アプローチによる新たな知見
疾患別マルチオミクス解析の最新動向
【神経・精神】
大規模ゲノム・オミクス解析による日本人の認知症研究
Large-scale omics analysis for dementia in Japanese
尾崎 浩一
1,2,3
Kouichi OZAKI
1,2,3
1国立長寿医療研究センター研究所メディカルゲノムセンター
2理化学研究所生命医科学研究センター
3名古屋大学大学院医学系研究科
キーワード:
認知症
,
アルツハイマー病(AD)
,
ゲノムワイド関連解析(GWAS)
,
ポリジェニックリスクスコア(PRS)
,
トランスクリプトーム解析
Keyword:
認知症
,
アルツハイマー病(AD)
,
ゲノムワイド関連解析(GWAS)
,
ポリジェニックリスクスコア(PRS)
,
トランスクリプトーム解析
pp.847-853
発行日 2025年5月31日
Published Date 2025/5/31
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293090847
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日本における認知症患者は,2025年には700万人を超えるといわれている.認知症を大きく分けると,①アルツハイマー病(AD),②レビー小体認知症,③前頭側頭型認知症,④血管性認知症,の4つに分類することができる.このなかで最も発症頻度が高い疾患はADであり,単一顕性(優性)遺伝性である家族性と孤発性が存在し,そのほとんどは孤発性AD(LOAD)である.LOADの発症には環境要因に加えて遺伝的要因が大きく関係することが知られている.近年行われた欧米人数十万~百万人近くのデータを用いたLOADの大規模ゲノム解析では,80近くの疾患関連染色体座位が同定されている.しかし,日本人におけるLOADの大規模解析はゲノム以外のオミクス解析も含めていまだ発展途上であり,欧米人と日本人,東アジア人とのゲノム構造の違いや,欧米人の疾患関連染色体座位が必ずしも日本人,東アジア人において再検証されるわけではないことからも,東アジア人,特に遺伝的均一性の高い日本人における大規模ゲノム・オミクス解析が必須となる.また,遺伝的要因データは生涯不変であり,早い段階で疾患などの遺伝的リスクを知ることができれば,行動変容などにより疾患発症の予防に役立つとともに,オミクス統合解析による根本的な発症メカニズム解明から革新的な診断,創薬も含めたゲノム医療を見据えることができる.一方,ゲノム医療に資する遺伝的要因を網羅的に探索するためには大規模なゲノムデータが必要になり,大規模バイオバンクの整備やバンキングされた試料のゲノム・オミクス解析,そのデータベースの構築・整備が必要になる.

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