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第5土曜特集 生活習慣病の克服に向けたゲノム医療――ゲノム医科学の進展と精密医療の実現
各論
【代謝内分泌疾患】
肥満症
Obesity
浅原 哲子
1
Noriko SATOH-ASAHARA
1
1独立行政法人国立病院機構京都医療センター臨床研究センター内分泌代謝高血圧研究部,名古屋大学環境医学研究所メタボ栄養科学寄附研究部門
キーワード:
一塩基多型(SNP)
,
ゲノムワイド関連解析(GWAS)
,
ポリジェニックリスクスコア(PRS)
Keyword:
一塩基多型(SNP)
,
ゲノムワイド関連解析(GWAS)
,
ポリジェニックリスクスコア(PRS)
pp.376-381
発行日 2021年7月31日
Published Date 2021/7/31
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27805376
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肥満の遺伝子異常は,単一遺伝子異常による肥満と複数の遺伝子異常による多因子遺伝に分類されるが,前者はきわめてまれである.近年,全ゲノムを網羅したゲノムワイド関連解析(GWAS)研究の進展により,多数の肥満関連遺伝子が同定された.しかし,BMIのばらつきに対して,現在同定されたSNPsによって説明できる割合はまだ数%と低く,個々の肥満発症予測に向けて十分な精度はない.そのリスク予測の方法として,リスクアレルの重み付総和を算出した指標であるgenetic risk score(GRS)があるが,リスク予測の精度として飛躍的な向上は認められない.そこで最近,GRSを基盤としたポリジェニックリスクスコア(PRS)が開発された.PRSは,予測に用いるゲノムワイド水準閾値を下げ,さらに多くのゲノム情報(数千~数百万)を用いてリスクアレルの重み付総和を計算したスコアである.肥満発症に対するPRSを用いた予測は臨床的妥当性が得られる可能性がある.しかし,地域差など解決しなくてはならない課題は多く存在し,また肥満症の精密医療を構築するには,今後,肥満症の発症予測のみならず,減量治療など介入効果に対する影響(減量抵抗性など)に関連するPRSの構築も重要な課題である.今後,プレシジョンメディスンの開発を目指した肥満症のゲノム研究の展開が期待される.
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