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第1土曜特集 健康危機への備えと対応――パンデミックと能登半島地震を踏まえた社会とシステムのあり方
社会・経済・制度政策の視点から
日本の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が消費行動へ与えた真の影響
True impact of Japan’s COVID-19 state of emergency on consumption
谷 直起
1
Naoki TANI
1
1京都大学経済研究所先端政策分析研究センター
キーワード:
消費行動
,
クレジットカードデータ
,
外出自粛要請
,
緊急事態宣言
Keyword:
消費行動
,
クレジットカードデータ
,
外出自粛要請
,
緊急事態宣言
pp.116-122
発行日 2025年4月5日
Published Date 2025/4/5
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293010116
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下における政府の外出自粛要請や行動制限措置が経済に及ぼした影響については,各国でさまざまな研究が行われており,なかでも個人消費の高頻度かつ直接的なエビデンスであるカード決済データを活用した研究が注目されている.筆者は,日本における緊急事態宣言が消費に与えた影響を分析するため,三井住友カード株式会社と共同で,同社のクレジットカードおよびデビットカードの決済データを用いて分析を行った.結果として,2020年の第1回緊急事態宣言時の消費の減少について,緊急事態宣言の発出そのものの寄与度は当該減少幅の1/3程度にすぎず,一方で,感染への恐怖心に伴う自主的な行動抑制が消費の減少に大きく寄与したことがわかった.次のパンデミックにおいて感染制御と経済活動のトレードオフを議論する際には,緊急事態宣言などの政府による措置自体の影響だけでなく,人々の恐怖心の影響を考慮して,感染制御と経済活動を両立することが重要になる.また,カード決済データをはじめとする高頻度消費データの分析体制を平時から整備しておくことで,パンデミック時に政府の措置が経済活動にどのような影響を与えているかリアルタイムに把握し,政府の感染制御措置の迅速な改善に活用していく必要がある.

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