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特集 ミトコンドリア――種々の疾患との関連と新規治療法のターゲットとしての可能性
ミトコンドリア移植による新規治療開発の試み
An attempt to develop a new treatment by mitochondrial transplantation
Byambasuren Ganbaatar
1
,
松田 和子
2
,
遠藤 逸朗
2
Byambasuren GANBAATAR
1
,
Wako MATSUDA
2
,
Itsuro ENDO
2
1徳島大学大学院医歯薬学研究部 血液・内分泌代謝内科
2同生体機能解析学分野
キーワード:
ミトコンドリア移植
,
糖尿病
,
悪性腫瘍
Keyword:
ミトコンドリア移植
,
糖尿病
,
悪性腫瘍
pp.477-481
発行日 2024年11月9日
Published Date 2024/11/9
DOI https://doi.org/10.32118/ayu291060477
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ミトコンドリアは生命活動に必要なエネルギー(ATP)を酸素呼吸によって産生するほか,さまざまな物質の代謝や細胞内シグナル伝達に関与して細胞機能維持に関わるとともに,アポトーシス制御についても中心的な役割を果たしている1).近年,中枢神経,肺,心臓などの組織障害に対して間葉系幹細胞からミトコンドリア供給が起こり,これが組織修復や機能回復に重要な役割を果たしていることが報告されている2).また,健常ミトコンドリア供給が癌細胞に起こると,腫瘍内でのATP産生が増え,腫瘍増殖とともに化学療法に対する抵抗性が獲得されることも示されている2).ミトコンドリアには,ATP産生を行い,自身の細胞にエネルギー供給を行うものと,褐色脂肪細胞内に存在し,脱共役タンパク質(UCP-1)を発現してエネルギーを熱に変換するものが存在する3).前述の障害組織に対して供給されるミトコンドリアはATP産生を行うミトコンドリアであり,このようなミトコンドリアの移植は加齢によりミトコンドリア機能が低下した病態に対して有効である可能性がある.また,UCP-1発現ミトコンドリアの移植を癌細胞に行うと,癌細胞内でのATP量を低下させて,腫瘍増殖抑制がみられるかもしれない.本稿では,これら2種類のミトコンドリアを移植した基礎的検討データを示す.In vitroのみの結果ではあるが,これまでにない機序を介した新規治療法の開発に貢献できる可能性があると期待している.
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