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特集 環境化学物質が人体へ与える影響
環境中のカドミウムと人への健康影響
Cadmium in the environment and its effects on human health
堀口 兵剛
1
Hyogo HORIGUCHI
1
1北里大学医学部衛生学
キーワード:
カドミウム(Cd)
,
イタイイタイ病
,
腎尿細管障害
,
骨軟化症
,
腎性貧血
Keyword:
カドミウム(Cd)
,
イタイイタイ病
,
腎尿細管障害
,
骨軟化症
,
腎性貧血
pp.118-122
発行日 2023年4月8日
Published Date 2023/4/8
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28502118
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カドミウム(Cd)は環境中に広く分布しているが,人は主にCd含有量の多い食品の摂取により体内に取り込む.わが国にはかつて鉱山由来のCd土壌汚染地域が存在し,特に富山県神通川流域の汚染は深刻であり,重症中毒例であるイタイイタイ病患者が多発した.消化管から吸収されたCdは肝臓で金属親和性の高い低分子量タンパク質のメタロチオネイン(MT)を合成して結合し,血液循環を介して腎臓に蓄積する.したがって,過剰のCd曝露により多発性近位尿細管機能障害が引き起こされる(Cd腎症).その状態が継続すると,尿細管でのリン再吸収障害による低リン血症,および重炭酸イオンの再吸収障害による代謝性アシドーシスが誘因となって骨基質石灰化が障害され,骨軟化症が続発する(イタイイタイ病).また,イタイイタイ病では腎臓からのエリスロポエチン産生低下による腎性貧血もみられる.わが国の残されたCd土壌汚染地域では,現在でも高度の体内Cd蓄積を示す住民がおり,そのなかから今後も新たなCd腎症やイタイイタイ病の患者が発生すると予想されるため,継続した住民に対する観察が必要である.
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