特集 現在からみる公害
イタイイタイ病とカドミウム中毒
能川 浩二
1
1千葉大学医学部衛生学教室
pp.617-621
発行日 1994年9月15日
Published Date 1994/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901107
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◆はじめに
わが国におけるカドミウム中毒の研究は,富山県神通川流域に今世紀以降多発したイタイイタイ病(以下,イ病)を契機として始まったといえるだろう.「イ病」の名前が初めて公式に用いられたのは,1955年の第17回日本臨床外科学会で,萩野らが「いわゆるイタイイタイ病(富山県婦中町熊野地方風土病)に関する研究」と題する報告を行ったときである.その後,多くの研究成果を踏まえて,1968年には「イ病はカドミウム(Cd)の慢性中毒により,まず腎機能障害を生じ,次いで骨軟化症をきたし,それに妊娠,授乳,内分泌の変調,老化およびカルシウム等の不足などが誘因となって形成されたものであり,その発生地域は神通川流域の一部に限られている.この地域を汚染しているCdについては,対照河川の流域にも存在する程度の自然界に由来するもののほかには,神通川流域上流の三井金属神岡鉱業所の事業活動に従って排出されたもの以外には見当たらない.(要旨の一部)」という厚生省見解が発表され,イ病は公害であるという行政姿勢が示された.その後,患者,家族が原告として三井金属を訴えた裁判は,第一審,第二審判決とも原告が勝訴し,司法上もイ病の原因がCdであるとの結論が下されている.
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