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1.はじめに
昨年(2006年7月),国際的な食品規格設定を行っているコーデックス委員会の第29回総会において,食品中のカドミウム(cadmium;Cd)の国際基準値が最終的に決定された(表1)1).これに基づき現在,日本でも食品安全性委員会において食品からのCd摂取にかかわるリスク評価が行われている.このように現在,国内外でCdの生体影響について大きな注目が集まっている.しかし,Cdの生体影響について初めて知られるようになったのは,1940年代,富山県の神通川流域に住む閉経後の婦人を中心に,Cdを原因物質とするイタイイタイ病が発生したことによる.イタイイタイ病に見られる骨軟化症はCdによる尿細管障害によるものと考えられており,Cdの慢性毒性の主たるものは腎毒性および骨毒性である.その後,研究が進み比較的低濃度での生体影響についても明らかとなってきた.1993年,IARC(International Agency for Research on Cancer)により,Cdはヒトに対する発癌性が認められる物質としてグループ1に分類された.最近では,酵母を用いたDNA損傷の修復阻害作用2)やラット肝臓培養細胞を用いたDNAメチル化酵素阻害によるDNAメチル化異常3)などCdによる発癌の機構についても研究が進められている.一方,1998年,環境省は環境ホルモン戦略計画SPEED '98で,内分泌撹乱作用を有すると疑われる物質として約70種の化学物質をリストアップしているが,その中にCdが記載されている.このように,Cdは哺乳動物の生殖器官に対し広範な悪影響を持つ新しいクラスの環境ホルモンとしても認知されてきている4).そこで今回,Cdの胎盤への影響について環境ホルモン作用を含め概説する.
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