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特集 基礎と臨床の両面から挑む血栓止血学
血流下における血小板を中心とした血栓形成シミュレーター
Multiscale simulation of thrombus based on platelet reaction under blood flow
中山 正光
1
Masamitsu NAKAYAMA
1
1東海大学大学院医学研究科先端医科学専攻
キーワード:
血小板
,
GPⅠbα
,
フォン・ヴィレブランド因子(VWF)
,
血栓形成
,
シミュレーション
Keyword:
血小板
,
GPⅠbα
,
フォン・ヴィレブランド因子(VWF)
,
血栓形成
,
シミュレーション
pp.1079-1083
発行日 2021年12月11日
Published Date 2021/12/11
DOI https://doi.org/10.32118/ayu279111079
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血栓には血小板が寄与する.ナノスケールのタンパク質相互作用によって,マイクロメートルスケールの血小板が凝集し,ミリメートルスケールの血栓が形成される.各スケールの現象は,おのおの相互作用して,多数の時空間的な多次元パラメータの影響を受ける.多次元情報の定量的扱いを苦手とするヒトの脳にて,血栓形成などの生命イベントを規定する多次元パラメータの因果関係を理解することは困難である.単純な四則演算しかできないが,多数の高次元情報を一括して高速処理できるコンピュータは,多次元パラメータが寄与するイベントの解析に役立つ.昨今のコンピュータの進歩は著しい.従来,巨額の国家予算を投入して開発したスーパーコンピュータに匹敵する大規模シミュレーションを,研究室レベルの計算機で行うことが可能となった.分子動力学シミュレーションではタンパク質同士の結合力,アミノ酸変異体の導入による生理機能の変化など,実証実験が困難な現象の予測が可能となる.ミリメートルスケールの血栓シミュレーターには,マイクロメートルスケールの血小板周囲における凝固系,線溶系,血流の因子を組み込むことで,パラメータの網羅的解析が可能である.計算科学と生物学の融合によって,生物の真理が解明されることが期待される.
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