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第1土曜特集 宇宙生命科学の進歩と医学応用への展望
宇宙環境に関連した各研究対象と最新の知見
宇宙に耐える極限生物から切り拓く新たな放射線ストレス防衛機構の解明
Elucidation of new radiation resistance mechanism in extremotolerant organisms
國枝 武和
1
Takekazu KUNIEDA
1
1東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻
キーワード:
放射線耐性
,
DNA防護
,
DNA修復
,
極限環境生物
,
クマムシ
Keyword:
放射線耐性
,
DNA防護
,
DNA修復
,
極限環境生物
,
クマムシ
pp.615-621
発行日 2021年11月6日
Published Date 2021/11/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27906615
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地球上にはさまざまな極限環境に耐性を示す生物がおり,クマムシはその代表的な動物のひとつである.クマムシは,たとえば放射線に対してもヒトの致死量の1,000倍の高線量照射に耐性を示す.耐性を支える分子メカニズムの多くは未解明であったが,近年,クマムシのクロマチン分画から同定された新規DNA結合タンパク質Dsupは核DNAのほぼ全域と共局在し,ヒト培養細胞に導入するとX線によるDNA損傷を約40%低減し,細胞の放射線耐性も向上させた.放射線は水分子から活性酸素種を発生させ生物障害を引き起こすが,DsupはDNAを被覆するように結合したりヌクレオソームに結合してクロマチンを凝集させたりすることで物理的に活性酸素種からDNAを防護することが示唆された.放射線耐性メカニズムについては,古くからDNA修復機構が重要な役割を果たすことが示唆されてきたが,Dsupの研究からDNA防護という新たなメカニズムの存在が提起された.一方で,Dsupだけではクマムシの高い放射線耐性すべてを説明できず,今後,クマムシからDsup以外の新たな耐性遺伝子の同定が進むことが期待される.
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