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連載講座 生命科学を拓く新しい実験動物モデル−17
クマムシ─極限環境耐性と静的生命の新しい研究モデル
Tardigrades, new animal model to study the mechanisms enabling extremotolerance and a static form of life
國枝 武和
1
Kunieda Takekazu
1
1東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻細胞生理化学研究室
キーワード:
クマムシ
,
極限環境
,
ストレス耐性
,
乾眠
,
宇宙生物学
Keyword:
クマムシ
,
極限環境
,
ストレス耐性
,
乾眠
,
宇宙生物学
pp.596-602
発行日 2018年12月15日
Published Date 2018/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200930
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クマムシという動物をご存知であろうか? 10年ほど前までは知る人ぞ知るマニアックな生物であったが,テレビやネットでもたびたび取り上げられるようになり,徐々に知られるようになってきた。マスメディアなどでは,“最強の動物”とか“何をしても死なない動物”などのように紹介されることが多いが,この世に不死身の動物などはいない。ただ,クマムシが通常の生物はとても耐えられないような様々な極限的な悪環境(ほぼ絶対零度の超低温や,真空,ヒトの半数致死量の1,000倍の放射線など)に耐えることができ,宇宙空間に曝露されても生存した初めての動物であることは事実である1)。
近年,クマムシの分子生物学的な解析を進めるための基盤が急速に整備され,動物の極限環境耐性を支える分子メカニズムへのアプローチが現実的なものになってきた。本稿では,ヒトをはるかに超える高い耐性能力を持つクマムシについて紹介させていただくと共に,最近明らかになってきたクマムシの耐性メカニズムの一端と哺乳類など他生物への応用も含めて紹介する。
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