特集 宇宙の極限環境から生命体の可塑性をさぐる
特集「宇宙の極限環境から生命体の可塑性をさぐる」によせて
古川 聡
1
1宇宙航空研究開発機構宇宙医学生物学研究グループ
pp.96
発行日 2018年4月15日
Published Date 2018/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200766
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医師かつ宇宙飛行士である筆者は,5か月半に及ぶ宇宙滞在で極限的ストレスを経験しました。それは例えば無重力による骨格筋の萎縮,頭重感,閉鎖環境による体内リズムの不調,宇宙放射線被曝,微生物リスク,等々。「これらは相乗的に作用するのでは? 地上でも関連する問題があるのでは?」との問いから,統合的な連携研究が必要との強い認識に至りました。
宇宙というとどこか遠い存在で実生活とは無関係,とお考えの研究者の方が多いのではないでしょうか? しかし,宇宙で身体に起こる事象を生命体の可塑性の観点から解明すれば,地上の研究だけでは気づかなかった微生物からヒトまで,生命の持つ新たな秘密を知ることができるでしょう。それらの知見は将来月や火星などに向かう超長期宇宙滞在や,一般の方の宇宙旅行,更に人類宇宙移住時に役立つと共に,地上での課題解決にもつながります。
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