Japanese
English
連載 いま知っておきたい最新の臨床検査――身近な疾患を先端技術で診断・Vol.9
鉄代謝検査
Laboratory tests of iron status
川端 浩
1
Hiroshi KAWABATA
1
1独立行政法人国立病院機構京都医療センター血液内科
キーワード:
トランスフェリン
,
トランスフェリン飽和度
,
フェリチン
,
ヘプシジン
Keyword:
トランスフェリン
,
トランスフェリン飽和度
,
フェリチン
,
ヘプシジン
pp.1074-1080
発行日 2021年6月19日
Published Date 2021/6/19
DOI https://doi.org/10.32118/ayu277121074
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
◎鉄は人体にとって不可欠な微量金属であり,その欠乏は貧血をはじめとした多彩な症状を引き起こす.一方,鉄過剰症は活性酸素種の生成を促してさまざまな臓器障害を引き起こす.このため,体内の鉄代謝の把握は臨床上重要である.血清鉄÷総鉄結合能で計算されるトランスフェリン飽和度は,体内の鉄の過不足を判定する上での簡便な指標である.血清フェリチン値は体内貯蔵鉄の量を反映し,その低下は鉄の枯渇,上昇は鉄過剰症を示唆する.ただし,高フェリチン血症は炎症やマクロファージの活性化でもみられる.体内の鉄の恒常性維持には肝臓から分泌されるヘプシジンが大きな役割を果たしている.鉄過剰状態ではヘプシジンの増加によって腸管からの鉄の吸収率が低下し,鉄欠乏状態ではその減少によって鉄の吸収率が高まる.慢性炎症ではインターロイキン6によってヘプシジンが増加し,これによって赤血球造血系への鉄の供給が滞る.遺伝性ヘモクロマトーシスや一部の無効造血疾患では,ヘプシジンの発現低下により鉄過剰症をきたす.保険適用外の検査であるが,ヘプシジンの測定は鉄代謝異常症の鑑別診断に有用である.
Copyright © 2021 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.