特集 電解質と微量元素の臨床検査ガイド
総論
1 代謝と生理
7)鉄(Fe)
八幡 義人
1
Yoshihito YAWATA
1
1川崎医科大学第一内科
キーワード:
鉄
,
トランスフェリン
,
トランスフェリン受容体
,
フェリチン
,
鉄吸収
Keyword:
鉄
,
トランスフェリン
,
トランスフェリン受容体
,
フェリチン
,
鉄吸収
pp.1311-1321
発行日 1990年10月30日
Published Date 1990/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542900319
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はじめに
鉄(Fe)は地球上に広く分布しており,特に鉱石,土には大量に含有されており,その点では,決して微量金属ではない.しかし,いったん生体内をみると,その含有量は極めて微量で,成人男子でもその体内Fe量はおよそ数gにすぎない.また,体内分布にも著しい特徴があり,赤血球内には全体内Fe量の約60%が含まれている一方,他の体組織にはごくまれである.
他方,機能面からFeの作用をみると,大別して,生体にとって,おおよそ四つの作用を持っているといえる1~9).第一は,ヘモグロビン(hemoglobin;Hb)分子とその生合成の点であり,第二は,細胞呼吸に関与する酸化還元系の諸酵素,例えばチトクロームC還元酵素,コハク酸脱水素酵素(SDH),NADH脱水素酵素,キサンチンオキシダーゼなど,Fe3+⇄Fe2+反応に関与するFeの役割である.第三は,細胞増殖に重要な細胞回転の調節酵素,例えばリボ核酸還元酵素などにおける構成成分としてのFeの作用であり,第四は,重金属としてのFeの直接作用,例えば肺結核症の空洞壁の異常Fe沈着などがそれであり,Feの殺菌作用が示唆されている.
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