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特集 新型データ駆動型サイエンスの起動
「富岳」で飛躍するコンピュータ創薬
Computer drug discovery that makes a leap forward in “Fugaku”
奥野 恭史
1
Yasushi OKUNO
1
1京都大学大学院医学研究科ビッグデータ医科学分野
キーワード:
富岳
,
分子動力学(MD)
,
プレシジョンメディシン
,
分子シミュレーション
,
創薬
Keyword:
富岳
,
分子動力学(MD)
,
プレシジョンメディシン
,
分子シミュレーション
,
創薬
pp.837-841
発行日 2021年2月27日
Published Date 2021/2/27
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27609837
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近年,製薬業界では新薬の研究開発費が増え続けていることに加えて,開発が容易なターゲット疾患のほとんどは開発し尽されており,新薬創出が難しい状況となっている.したがって,薬のつくり方を革新し,薬効が高く副作用の少ない新薬を効率的に創出するために,シミュレーションや人工知能(AI)などのIT技術に大きな期待が寄せられている.しかし,これまでの創薬計算技術は予測精度が低く,予測できる化合物・標的タンパク質の数にも限界があることから,実験に置き換わるほどの革新的技術に至っていなかった.タンパク質などの生体内分子の働きを精密に予測するには,分子構造の経時変化をシミュレートする分子動力学(MD)法が用いられている.しかし,この手法は計算コストが比較的高く,スーパーコンピュータ「京」を用いても,酵素反応などの生体反応の時間スケール(ミリ秒~秒)よりもはるかに短いシミュレーションしかできなかった.一方,「富岳」は「京」の約100倍の計算性能を有するため,これまでよりもはるかに長時間のシミュレーションが実現し,創薬計算技術の予測精度が大幅に向上すると期待されている.本稿では,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬探索やプレシジョンメディシンのための変異タンパク質シミュレーションを中心に,創薬計算における「富岳」のインパクトを述べる.
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