Japanese
English
特集 コンピュータと脳
脳のようなコンピュータ
Brain-like computer
伊藤 正男
1
Masao Ito
1
1理化学研究所脳科学総合研究センター
pp.48-58
発行日 2008年2月15日
Published Date 2008/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100147
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ヒトの脳のように働くコンピュータを作るということは現代社会に根強い願望の一つである。しかしこれがいかに難しいかは本特集で北野氏1)が論じられているところであるが,そのようなコンピュータの開発計画がいろいろと形を変えながら発表され,何年かしては消えてゆく。そのたびに何らかの進歩があり,次の計画へと引き継がれてゆくが,果してそれが今どのような段階にあるのか,そのゴールはどの辺に設定されているのか,いかに遠いのか近いのか,どこにそのハードルがあるのか,脳の研究の側にいる筆者としてはひどく気掛かりなことである。
現実の脳にはお構いなく「力任せに」脳のような働きをコンピュータ化する立場もあれば,「作ることによって脳のことを理解する」という構成的な脳研究の立場もある。「作ることによって大きな社会的な有用性を生み出す」という実践的な立場も重要だが,筆者はそれとはまた別に,脳のことが本当にわかったかどうかを示す究極の証明が「創る」ということの中にあると考えている。意識のメカニズムが本当にわかれば,意識を持つロボットができるはずである。それができないかぎり,意識の問題は本当には理解されていないことになる。
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