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第1土曜特集 My Medicine(マイ・メディシン)――オルガノイド研究が拓く新しい医療のかたち
創薬研究の観点から
ミニ肝臓技術を用いた薬剤性肝障害におけるマイ・メディシン
Development of mini liver for “My DILI” approach
川上 絵理
1,6
,
武部 貴則
2,3,4,5,6
Eri KAWAKAMI
1,6
,
Takanori TAKEBE
2,3,4,5,6
1武田薬品工業株式会社リサーチT-CiRAディスカバリー
2東京医科歯科大学統合研究機構先端医歯工学創成研究部門
3横浜市立大学先端医科学研究センター
4シンシナティ小児病院消化器部門・発生生物学部門・幹細胞・オルガノイド医学研究センター
5シンシナティ大学小児科
6T-CiRA共同プログラム
キーワード:
ミニ肝臓
,
iPS細胞
,
薬剤性肝障害(DILI)
,
ポリジェニックリスクスコア(PRS)
Keyword:
ミニ肝臓
,
iPS細胞
,
薬剤性肝障害(DILI)
,
ポリジェニックリスクスコア(PRS)
pp.640-646
発行日 2021年2月6日
Published Date 2021/2/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27606640
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薬剤性肝障害(DILI)は,さまざまな薬剤によって肝臓で現れる副作用であり,重症例は急性肝不全をも呈することから,投与前段階における一次予防,発症後早期の二次予防や,急性期の積極的な治療介入が求められているが,一般にDILIは除外診断の要素が強く,適切な診断手法が存在しない.これら課題解決のためには,個人ごとのDILI感受性予測や,細胞モデルによるDILI発症薬剤の予測,DILIの発症に関連するメカニズムの解明,などを推進することが求められている.筆者らは近年,国際的なゲノムコンソーシアムとの連携のもと,ゲノムワイド関連解析(GWAS)から算出したPRS(ポリジェニックリスクスコア)がDILIの罹患感受性を予測しうることを報告した.つぎに,毛細胆管などの細胞極性発現や,免疫細胞を組み合わせた新たなiPS細胞由来ミニ肝臓の作製手法を基盤として,非臨床試験では評価が困難であったさまざまなタイプの薬剤によるDILI評価が可能であることを示した.さらに,それらのメカニズムの根幹には,小胞体(ER)ストレスや酸化ストレス応答が関与することを明らかとした.本稿では,オルガノイド技術を基盤としてDILI予測・診断・機序解明をめざす現状の技術的進歩と課題,さらにそれらを活用した臨床応用の可能性について議論したい.
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