特集 医工・産学連携
神経芽腫の悪性度層別化マーカーの開発
天野 日出
1
,
林 善治
1,2
,
原田 和治
3
,
田栗 正隆
3
,
檜 顕成
1
,
内田 広夫
1
Hizuru Amano
1
,
Yoshiharu Hayashi
1,2
,
Kazuharu Harada
3
,
Masataka Taguri
3
,
Akinari Hinoki
1
,
Hiroo Uchida
1
1名古屋大学大学院医学系研究科小児外科
2シミックファーマサイエンス株式会社
3東京医科大学医療データサイエンス分野
pp.975-979
発行日 2025年9月25日
Published Date 2025/9/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000001316
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はじめに
神経芽腫は神経堤由来の交感神経系の組織である副腎髄質や交感神経幹から発生する腫瘍であり,カテコラミンおよびその代謝産物を産生するのが特徴である。そのため患児の尿中には,カテコラミン代謝産物であるHomovanillic acid(HVA)とVanillylmandelic acid(VMA)が健常児と比較して顕著に多く含まれることが知られており,尿中HVAおよびVMAは神経芽腫に特徴的な腫瘍マーカーとして臨床で広く使用されている。しかし,尿中HVAおよびVMAにより悪性度を層別化するのは難しい。神経芽腫では自然退縮し経過観察のみですむ予後良好となる症例が一部に認められる一方で,強度の高い治療をしても死に至る予後不良な症例も存在するなど,さまざまな腫瘍動態を示すことから,予後改善には悪性度層別化に基づく早期の適切な治療介入が重要である。さまざまな腫瘍動態を示す本疾患の治療の必要性や治療強度の決定に重要な悪性度を,侵襲の高い生検手術をせずに,非侵襲に,簡便に層別化可能なマーカーの開発が喫緊の課題である。

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