成人と比較した小児重症脾損傷に対するnon-operative management

はじめに

　脾臓は肝臓と並んで最も損傷を受けやすい腹部臓器といわれ，小児外傷においても最も頻繁に認められる鈍的腹部臓器損傷の1つである。以前は重症脾損傷の治療戦略として脾臓摘出術を含めた外科的介入が積極的に行われていたが，脾機能の温存やOPSI（overwhelming post-splenectomy infection）などの術後合併症を避けるため，保存的治療（non-operative management：NOM）を優先する方針に変化してきた。脾損傷におけるNOM優先への方針転換は小児からはじまり，現在では成人においても受け入れられるようになったが，成人のNOM非完遂率は小児に比べて高い傾向があり，治療戦略が異なる部分がある。本稿では，小児外傷性脾損傷のNOMについて，実際の症例をもとに特に重症例における成人例の管理との相違点を整理し，わが国における小児重症脾損傷の適切な治療戦略を検討する。