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はじめに
肝外門脈閉塞症(EHPVO)は小児における非肝硬変性門脈高血圧症の主な原因であり,胃食道静脈瘤や血小板減少などの門脈圧亢進症症状を呈する。治療方法は議論の的であり,歴史的には静脈瘤に対する硬化療法や結紮療法,Hassab手術,脾臓摘出,食道離断術などが行われていたが,近年では閉塞した門脈系を除圧するためのシャント手術がスタンダードである。EHPVOに対するシャント手術手技には,門脈体循環シャント造設術(portosystemic shunt:PSS)とメソレックスバイパス(meso-Rex bypass:MRB)がある。PSSは高圧の門脈系循環から全身循環へ血液を迂回させる目的で,門脈支流(脾静脈,上腸間膜静脈,下腸間膜静脈,左胃静脈)と全身静脈〔下大静脈(図1A),腎静脈(図1B),副腎静脈〕を吻合する。PSSは1945年にArthur BlakemoreとAllen Whippleによって最初に開発され,5歳女児の再発性静脈瘤出血に対して脾腎シャント(脾臓摘出術と左腎摘出術のあと)が行われた1)。それ以来,Warren shuntとしても知られる遠位脾腎シャントは,成人および小児の両方に対して作製されるPSSとしてより一般的になっている。一方,MRSはベルギーの外科医de Ville de Goyetが1998年に発表したもので,PSSとは異なり,EHPVOを迂回しながら門脈または上腸間膜静脈を肝臓(門脈臍部)にバイパスする術式として,現在ゴールドスタンダードになりつつある(図1C)。MRSは,EHPVOの患児において門脈血流が生理的に肝内門脈に流れること,つまり「肝前門脈血流遮断の解除,肝臓の再灌流,門脈圧亢進の解消」を目的とした手術である2)。EHPVOの小児患者に対する外科的シャントの適応は,静脈瘤出血などの門脈圧亢進症の生命を脅かす合併症,巨大な脾腫や重度の血小板減少症,および実行可能または耐久性のある血管内治療法がないことである3)。MRSは限定した施設で行われること,解剖学的に適応にならない症例があることから,EHPVO症例の44~56%において実行不可能な治療法であることを留意すべきである4,5)。また,手技として難易度が高く,合併症はさまざまである。
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