特集 腹腔鏡下噴門形成術―新技術認定制度に向けて
ラップ形成(Toupet法)
矢本 真也
1
,
三宅 啓
1
,
野村 明芳
1
,
大林 樹真
1
,
菅井 佑
1
,
根本 悠里
1
,
山城 優太郎
1
,
福本 弘二
1
Masaya Yamoto
1
,
Hiromu Miyake
1
,
Akiyoshi Nomura
1
,
Juma Obayashi
1
,
Yu Sugai
1
,
Yuri Nemoto
1
,
Yutaro Yamashiro
1
,
Koji Fukumoto
1
1静岡県立こども病院小児外科
pp.49-53
発行日 2024年1月25日
Published Date 2024/1/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000000692
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はじめに
噴門形成術は1956年にNissenによって報告され1),Nissen法は胃底部を食道に360度巻きつけることで解剖学的に逆流を防止する術式である。その後,Thal2)とToupet3)は,胃底を部分的に食道に巻きつける術式を報告した。Toupet法は食道背側に通し180~270度食道に巻きつける術式である。近年,成人領域でのシステマティックレビューでは,腹腔鏡下Toupet噴門形成術が腹腔鏡下Nissen噴門形成術に比べ,術後の嚥下障害やガスによる腹部膨満の頻度が低く,再発や術後逆流率では有意差がないことから,腹腔鏡下Toupet法が主流になりつつある4)。小児領域では腹腔鏡下Toupet法と腹腔鏡下Nissen法を比較したランダム化比較試験(RCT)はなく,non-RCTのシステマティックレビュー,メタアナリシスを行うと術後再発や嚥下障害において有意差はないという結果であった5~9)(図1)。Thal法とNissen法を比較したRCTにおいて重症心身障碍児ではThal法の再発率が高く,経口摂取を行う児ではThal法で嚥下障害が少ないという結果が報告されている 10)。噴門形成術は重症心身障碍児に行われることが多いため,小児ではまだNissen法が主流であるが,Toupet法はpartial wrapのなかでも再発率が低く,狭窄が少ない術式であり,今後採用する施設が増えてくる可能性がある。Nissen法に比べToupet法は6針固定であり,気をつけるべき点としては右側ラップの引きつれ,左右のバランス,食道への刺入の深さであると考える。
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