- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
出生児がなんらかの先天異常を有する割合は約5%といわれる。この先天異常とは生命学的,機能的,社会的,整容的な影響が大きく,明らかに治療対象となるような大奇形(major anomalies)を指すことが多いが,代謝異常を代表とした臓器の機能異常をも含む幅広い概念である。先天異常症候群は多器官に及ぶ先天異常がある疾患の総称で知的障害や成長障害を伴いやすい。患者とその家族はその症状そのものに加えて将来の見通しにも不安を抱えやすく,診断のために受診や検査をくり返す“diagnostic odyssey”を経験する。先天異常症候群には遺伝性疾患が多く含まれることから,遺伝学的検査はその診断に広く用いられ確定診断に貢献してきたことは間違いないが,臨床診断が推定困難な多くの先天異常症候群ではdiagnostic odysseyを解決できなかったこともまた事実である。近年,マイクロアレイ染色体検査(chromosomal microarray:CMA)や全エクソーム解析(whole exome sequencing:WES),さらには全ゲノム解析(whole genome sequencing:WGS)といった網羅的解析が急速に普及した。これらは臨床診断が想定困難な状況においても確定診断が可能な探索的検査に位置づけられ,diagnostic odysseyの早期解決に加えて先天異常症候群のある子どもやその家族への心理社会的支援にも役立っている。さらには器官系統の先天異常を伴わず知的障害のみを主症状とする遺伝性疾患の病態解明にも網羅的解析が広く用いられ,従来は神経・精神領域の診察や画像検査が中心であった知的障害の原因検索に大きな変革をもたらしている。わが国では2021年10月にCMAが保険収載され,網羅的解析の幕開けとともに臨床検査として普及し活用されている。早期診断は疾患の自然歴に則した健康管理や治療にも役立つことから,小児期の遺伝学的検査は先天異常症候群さらには知的障害のある子どもにとって重要な検査となっている。一方,親の代諾で行われる小児期の遺伝学的検査は患者本人の意思だけでなく家族の抱えるさまざまな心情にも配慮しながら進めていくこととなる。

© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.

